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「教育 × テクノロジー × 経営」──キャリアの交点で、学び直しを決意

【教育イノベーター Voice   1期生リレー連載 No.7】

 ITエンジニアとしてキャリアをスタートし、教育ベンチャーのCTO、そして現在は教育DXを推進する株式会社ビルディットのCEOとして活躍する、
2025年入学1期生、富田 陽介さん。
開学を知った瞬間「これは自分のための大学院だ」と直感し、本学への進学を決意しました。
 生成AIやVR、Notebook LMなどを活用しながら、AI時代にふさわしい学習スタイルを実践し、技術と教育を融合させた“次世代の学び”の可能性を追究。現在は、テクノロジーを活用して“いかに学びの体験価値を拡張できるか”を軸に、実務と往復しながら新たな教育モデルの構築に取り組んでいます。
 本記事では、情報技術と教育をつなぐフロントランナーとしての視点から、教育テック大学院大学での学びがどのように事業と理念に接続されているのかを紐解きます。

目次

  1. なぜ、今この大学院で学ぶのか
  2. 学び始めて感じていること
  3. 今取り組んでいること、今後の展望
  4. 終わりに
  5. PROFILE

1.なぜ、今この大学院で学ぶのか

 本学への入学理由を一言でいうと、一目で「私のための大学院だ」と直感したからです。
 理由の詳細をお話するにあたって、かんたんに私の社会人キャリアについて書きたいと思います。

 私は20年以上、情報通信技術者として働いてきましたが、直近15年ほどは主に社会人教育の領域におけるIT活用やDXを推進するためのシステム開発者として、研修会社や習い事事業者、教育ベンチャーのシステム開発やプロジェクト支援をおこなってきました。

 もともとは携帯電話やスマートフォンなどに向けたモバイルアプリケーション開発に関心があり、エンジニアとしてのキャリアをスタートしました。ですが、経験を重ねていくうちに後進エンジニアの育成に関わったり、また、プライベートでも子どもを授かったりしたことが、教育領域に関心をもったきっかけとなります。

 その後、とある教育ベンチャーのCTO(最高技術責任者)を務めた経験から、以降、自分が培ってきた情報技術スキルを教育分野にbetしていくことを決め、2016年には教育DXを推進するシステム開発会社である株式会社ビルディットを創業しました。現在、私は、株式会社ビルディットの代表を務めています。

 ビルディットでの第5期を迎えた2020年頃から、請負の開発サービスだけではなく、自社が掲げている社会ビジョンである「一人ひとりの成長が、世界をより良くする」を実現していくための自社サービスの開発に着手し、2021年4月には「内省・ふりかえりの習慣化を支援するAIコーチングアプリ Stockr」をリリースしました。現在私は、この内省アプリを通じて、多くの人が自身の生き方や自分だけの言葉に出会い、自信や充実感に満ちた人生・挑戦と成長の人生を歩んでいく支援をしています。

現業では教育サービスの開発に従事

 このように、私のキャリアは、情報通信技術のエンジニアとしてスタートし、途中から教育領域に関わり、直近10年ほどは経営者としての活動を重ねてきていることになります。つまり、本学が掲げている「教育 X 経営 X テクノロジー」の学際領域は、私のキャリアのど真ん中です。私はこれまで、自分の選んだ道を信じながらも、どこかキャリアを模索していることを感じていましたが、本学での学びは、私の歩んできた道を体系的に落とし込む絶好の機会だと確信しました。

 さらに、本学が開学1期生を募集するタイミングであったこと、大学院の説明会で教授陣や事務局の方々の熱いプレゼンテーションをお聴きできたことも入学の決意を後押ししました。経営者としての活動をしながら大学院で学ぶということは、かんたんな道ではないことを直感していましたが、1期生という選択をする同期や、熱い先生方とのご縁ができることは、学びをともに楽しめる環境であり、大学院生活をやり切れることにも繋がるだろうと考えました。

2.学び始めて感じていること

 すぐに感じたのは、「学び方」そのものに対する革新性です。いつもワクワクしながら学びに向き合えています。

 本学での学びは、単に講義や課題提出管理が完全オンラインであることに留まりません。教授陣や事務局の方からのメッセージでは、節々に、AIや新しいテクノロジー活用を奨励するような価値観を感じています。「AIを使ってレポートを書くな」と言われることはなく、むしろ「AIとディスカッションした結果をレポートにまとめてください」といった課題が出ることもあります。
 また、一部の講師や教授からは、AIを活用した学び方についてのガイドをいただくこともありますが、情報技術の現場経験を重ねてきた私にとっても、斬新なアイデアだなと感じる瞬間がたびたびあります。

 講義のアーカイブ動画を倍速で何度も視聴したり、その書き起こしをNotebook LMにかけてマインドマップで整理したり、さらに自分の理解を確認するためにAIと対話をしたりということは日常茶飯事です。

 大学院での学びは、先行研究の論文をリサーチすることも多いですが、論文の検索や翻訳、読み進めていくうえでの関連知識のインプットなどにも、AIや各種のオンラインツールを活用しています。ゼミ内の発表にVR空間を使ってみたこともありましたが、VR空間でアバターを介したコミュニケーションをするだけで、想像していた以上に心理的な距離の近さと学習体験の深みを感じることができ、これもまた私にとって新しい発見でした。

河﨑ゼミでのcluster実証

 このような学びのスタイルを実践し、さまざまなバックグラウンドをもった先生方や同期生とのディスカッションを重ねていく中で、次世代の学び方や教育のあり方を展望するのは、非常にエキサイティングな環境だと実感しています。

3.今取り組んでいること、今後の展望

 私が取り組んでいく教育活動のテーマの一つとして「テクノロジーによる教育価値の向上」というものがあります。テクノロジーを、事務手間の削減や効率化に使うだけではなく、如何に教育的価値を増大させられる方向に応用できるか、ということに関心をもっています。

 上述した、私の事業で展開している「内省・ふりかえりの習慣化を支援するAIコーチングアプリ」は、この教育活動の一部でもあります。学習者が、より大きな学びの価値を享受するために、テクノロジーがどのように役立つのか。学習者にとっての価値と、事業価値を両立させるチャレンジに持続的に取り組んでいくために、現在は「如何に魅力的な学習体験を作り出すか」というところにフォーカスして研究活動を進めています。

 その先は、本学での学び修了後の活動となると思いますが、中長期的には、私自身の教育領域でのスタートアップ事業を持続可能なものとし、そのための社会的・政策的な機能を包含するエコシステムを構想・提言・展開していくことが私のビジョンとなっています。

地域の大学での講演活動

4.終わりに

 この記事を読んでくださっている方は、教育テック大学院大学での学びに関心を持たれている教育関係者やテック業界の方、経営者の方なのではないかなと思います。

 率直にいうと、本学は、新しい環境故に、オンラインキャンパスツールの使い勝手や、学生生活における重要情報の連絡スタイルにて、課題感を感じることもあります。ですが、本学には、そういった立ち上げ期の課題を補って余りあるほどの有意義な環境があります。

 オンライン大学院ではありますが、一度、同期生が対面で集まるチームビルディング合宿というものがあり、そのときに先生が仰った「皆さんは1期生として、時空を超えたリーダーシップを発揮してください」というメッセージが、私の心に強く刻まれています。

 私はテクノロジー領域での経験を長く積んできた人間ではありますが、日本の教育には世界に誇れる考え方やコンテンツが沢山あると思っていますし、社会が投資すべき対象として、教育の領域は非常に重要なものだと考えています。

 もし、この記事を読んで、本学での学びに対して関心が強まったという方がいらっしゃったら、その直感は正しいです。ぜひ、一歩を踏み出していただき、ともに次世代の教育を創り出す、時空を超えたリーダーシップを開発してまいりましょう。

ご一緒できることを楽しみにしています!


5.PROFILE

 株式会社ビルディット 代表取締役CEO。
 通信事業者のエンジニアとしてキャリアをスタート。モバイル向けソフトウェア開発会社でのSEとして経験を積んだ後、ソフトウェア開発会社を創業。スマホ向けのゲームサーバー開発に従事し、複数のゲームタイトル開発を手掛ける。
 その後、教育ベンチャーのCTO(最高技術責任者)として教育事業に関わったことをきっかけに、教育領域に特化してITを活用するフィールドで活動。現在の会社は創業3社目で、内省・振り返りを習慣化するAIコーチングアプリ「Stockr」を開発・展開。その他、教育事業者のDX支援も行っている。

研究テーマ
テクノロジーによる教育価値の向上と、持続可能なエコシステムの構築(仮)

所属ゼミ
河﨑 雷太  教授 ゼミ

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