教育サービス(教室・塾)企業のDX実現に向けて

【教育イノベーター Voice 1期生リレー連載 No.4】
GIGAスクール構想や生成AIの普及が加速する中、民間教育サービスも変革を迫られています。
2025年入学1期生・丸谷昂明さんは、従来型の教室・塾が抱える課題を前に、「公教育と民間教育の垣根を越えた新しい学びの形」を模索するため本学に進学しました。
経営学や情報学、教育学を横断する学びと、多様な仲間との対話から生まれる発想をもとに、DXによる民間教育の変革と、すべての子どもたちに質の高い教育を届ける仕組みづくりに取り組んでいます。
目次
- なぜ、今この大学院で学ぶのか
- 現在取り組んでいる研究:公民連携による新しい教育の形
- 社会人大学院生としての生活
- 今後の展望と皆様へのメッセージ
- PROFILE
1.なぜ、今この大学院で学ぶのか
現在、GIGAスクール構想や生成AIの急速な普及といった教育環境の激変は、私の属するような民間教育事業者にも変革を迫っています 。一方、長年に渡り対面指導と紙の教材に頼ってきた従来型の教室・塾といったサービスは、組織構造や文化などの要因により、柔軟な変革が得意とはいえません 。この状況に関する強い課題意識から、これからの民間教育がどうあるべきかを探求したいと考え、本学への入学を決意しました。
私は新設の理系高校に一期生で入学、大学では文学部で芸術学や心理学を学び、就職後は教育サービス事業でのIT導入に携わるなど、異なる領域への越境を繰り返してきました。こうした経験から、多様な領域の知見を繋ぎ合わせることで、新しい価値、すなわちイノベーションが生まれやすくなると考えています。教育テック大学院大学では、教育学・経営学・情報学にまたがる広いカリキュラムが提供されており、そこに集う多様な人々との出会いがあります。多くの点を結びつけ、イノベーションのきっかけを創るには絶好の環境です。
2.現在取り組んでいる研究:公民連携による新しい教育の形
私が所属するゼミの柴山慎一先生は、経営学(組織論や広報マーケティング・ブランディング)による企業の変革を実践されてきた方です。先生のご指導のもと、私は今、「従来型民間教育サービス(教室・塾)におけるDX実現」というテーマで研究を進めています。具体的には、これまで分離されてきた公教育と民間教育の垣根を越え、両者が連携する新しい教育の仕組みを構想するものです。例えば、子どもの学校での学習データを民間事業者と共有し、一人ひとりの個別最適な学びを学校外でもサポートする、といったような仕組みのことです 。激務により余白がないと言われる教員の業務を再分配することで、教員の役割を知識伝達から「学びの設計・伴走」へと転換することにも繋がると考えています 。もちろん、個人情報保護といったガバナンス面の課題にも真摯に向き合う必要がありますし、実際には限られた研究期間でどこに焦点を合わせて深堀りするか、もう少し検討が必要ですが……。
ゼミ以外の講義においても、本学での学びからは知的好奇心を刺激されます。特に、ソーシャル・アントレプレナーシップ論や、各講義における教育、政治、ITなどの第一線で活躍されるゲスト講師のお話は、社会課題解決への思いを一層強くしました。すべての子どもたちに質の高い教育を届けるというSDGsの目標達成にも貢献したいと考えています。多様なバックグラウンドを持つ教授陣や学友との対話は、自分の視野を大きく広げてくれます。仕事においても役立つ引き出しや人脈が増えました。
3.社会人大学院生としての生活
平日の就業後、そして週末が主な学習時間です。授業はオンラインなので、移動での時間のロスがなく、大きな利点です。リアルタイムで参加できない場合も、オンデマンド配信で後追い視聴できるため、業務や家庭の予定と重複があってもリカバリできます。ただし、多くの授業ではグループワークが盛り込まれているため、極力リアルタイムで出席するようにしています(純粋にその方が得られる学びが多く、面白いため)。
各授業の後にはレポート等の課題が課されることが多いです(授業が2週間サイクルのため、期限は比較的長め)。私は受講しながらクラウド上にノートをまとめておき、授業のない日の夜や週末にまとめて課題に取り組んでいます。
現在私は、家庭では2️児の父、仕事では30人超を擁する室の長です。家庭や仕事との両立は大変ですが、同僚や家族の理解と支えによってなんとかこなせています。日曜の日中だけは極力、仕事も学業も忘れて家族最優先で時間を使うようにしています。
4.今後の展望と皆様へのメッセージ
本学での学びは、私自身の人生を通じたキャリアにとって大きな糧となるだけでなく、日本の教育の未来を切り拓く一助となると信じています。この記事を読んでくださった皆様にも、社会人として学び続けることの意義や、本学の魅力の一端を感じていただけたなら幸いです。変化の激しい時代だからこそ、共に学び、未来を創造していきましょう。
5.PROFILE
氏名: 丸谷 昂明 (まるや たかあき)
略歴:
2004年 東京都立科学技術高校 科学技術科 卒業
2008年 早稲田大学 第二文学部 表現・芸術系専修 卒業
2009年 (株)学習研究社 入社
※現在は分社化により(株)学研エデュケーショナルに所属
2024年10月より管理部 システム管理室長
教室事業におけるIT導入、顧客管理、ユーザーサポート等を担当
研究テーマ:
従来型民間教育サービス(教室・塾)におけるDX実現
所属ゼミ
柴山慎一 教授 ゼミ
