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  • 教員紹介

教育テック大学院大学がめざすもの / 秋田 次郎 教授

 皆様こんにちは。私は、教育テック大学院大学、教育情報・経営リーダーシップ研究科専任教授で「教育データ・アナリティクス論Ⅰ・Ⅱ」の授業を担当しております秋田次郎と申します。
 私はもともと二十歳前に大学に入学した頃は理系の工学部で学びましたが、卒業後に文系の法学部に進んで国際公法と憲法を学び、その後、経済学の大学院に進学して以降は国内外で経済学を学んだ変わり種です。
 そうした紆余曲折の経験を可及的に活かして、複眼的思考と好奇心を維持するように今も心掛けています。

【GPT(生成型事前学習トランスフォーマー)はGPT(汎用技術)である】

 なかでも、現在進行中の深層学習人工知能という汎用技術が私たちの経済社会を塗り替えていく様子からは目が離せません。活版印刷や蒸気機関、電気工学にインターネット通信といった汎用技術は、それまでは人間が従事してきた仕事を自動化して置き換えていくのと併行して、それまでは思いもよらなかった新しい仕事を生み出してもきました。
 人工知能も同様で、人間を置換(displace)する効果と、人間を新しい仕事に再配置(reinstate)する効果の双方が大きく進んで世の中は激変するでしょう。そのなかで人間に求められるスキルセットも従前とは大きく様変わりし、変化し続けるでしょうから、それに応じて教育もその手段と目的の双方について根本的かつ継続的な見直しを余儀なくされます。

【AIがあなたの仕事を奪うのではない。AIを使いこなす他の誰かがあなたの仕事を奪うのだ】

 経済学者のボールドウィン(Richard Baldwin)は、”AI won’t take your job,…It’s somebody using AI that will take your job.”(「AIがあなたの仕事を奪うのではない。AIを使いこなす他の誰かがあなたの仕事を奪うのだ。」)と喝破しました。ならば人工知能を駆使するとはどういうことで、その為にはどのようなリソースや教育が必要なのかが問われます。これは単なる技術論を超えた存外に深い問いであり、そもそも人間の知能や認識とは何なのかという深淵を覗きこませる契機を孕みます。人工知能が足し算・引き算、微分・積分を代行してくれても人間が数学の原理を理解する価値は減りません。人工知能がプログラミングを代行してくれても、人間がソフトウェア工学の原理を理解する価値も失われないでしょう。

【教育テック大学院大学がめざすもの】

 既に半世紀前、来る情報化社会を見据えて、未来学者のトフラー (Alvin Toffler)はベストセラー著作「未来の衝撃」において、ある心理学者の名言:“Tomorrow’s illiterate will not be the man who can’t read; he will be the man 1 who has not learned how to learn.”(「明日の文盲とは読めない者のことではなく、学び方を学んでこなかった者のこととなろう。」)を広く知らしめました。
 中国の故事成語にも「人に授くるに魚を以てするは、(人に授くるに)漁を以てするに如かず」、つまり人に魚を与えるよりも漁を教えるほうがよいという例えがあります。学ぶことを学ぶメタ指向は古来重要でしたが、今後は、深層学習人工知能をどう用いてどう学ぶかを学ぶことの重要性が増し、経済社会の広範な場面で創意工夫が重ねられていくでしょう。左様に汎用技術の再配置効果の全容が見通せず当面は霧が晴れないなか、教育の近未来を予想しながら今なすべきことを模索して知恵を出し合う場がいまほど必要なときも稀です。
 教育テック大学院大学は、将来への希望と健康な危機感とをお持ちの有為な皆さんが集い協議する場を提供したいと心から望んでいます。

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