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あなたの学びが地域や社会の未来を創る― 教育テック大学院で育む、越境と共創の力 ―

 プロフィール写真の私が抱えているのは「南高梅」です。今年6月に、南高梅発祥の地、和歌山県みなべ町に梅の収穫のお手伝いに行きました。梅の木から直接収穫する「青取り」と、紅がさして黄色く熟して木から自然に落下した実を地面(青いネットが敷かれている)の上から拾う「ひらい」という2種類の作業があります。青取りしたものは梅酒や梅ジュース用に、完熟して落ちたものは梅干し用に加工されます。
 みなべ町は隣の田辺市とともに、2015年に「世界農業遺産」(FAO)に認定され、今年10周年を迎えたところです。全国約半数の梅を産出している日本一の梅の産地です。世界農業遺産やみなべ町は私にとって重要な研究フィールドです。

世の中を変えるのは、私たち一人ひとり

 私の専門は、事業構想・環境再生・地域振興・都市農村交流などで、国内の「世界農業遺産」認定地域をフィールドに実践的な研究を行っています。地域固有の自然・農林漁業・暮らし・文化と学びを結びつけ、持続可能な社会を構想するのが研究の柱です。
 キャリアの出発点は東急百貨店や東急総合研究所での企画・生活行動研究。その後、英国の自然化粧品ブランド「ザ・ボディショップ」(イオンフォレスト)で、環境・人権・動物保護などをテーマに社会変革キャンペーンを担当し、創業者アニータ・ロディックの「You can make a difference.(世の中を変えるのは私たち一人ひとり)」という言葉に強く影響を受けました。
 2002年には「ロハス(LOHAS)」の理念を日本に紹介し、著書『ロハスビジネス』(朝日新書)や「ロハス・ビジネス・アライアンス」の設立を通じて普及に努めました。
 地域活性化に関する代表的な実践・研究は、宮城県大崎市の「蕪栗沼・ふゆみずたんぼプロジェクト」です。東日本大震災の復興プロジェクトでは、生物多様性保全と地域ブランド化を両立し、2014年には計画行政学会最優秀賞を受賞しました。大崎市は後に「世界農業遺産」および「SDGs未来都市」に選定され、私は2022年に大崎市での活動に関し総務大臣表彰を頂きました。

 現在はみなべ町の「SDGs未来都市」計画を支援し、輝く町民の学びの場「みなべ梅ラーニングコモンズ」やウェルビーイング指標の導入、梅剪定枝のバイオ炭化など、地域の未来づくりを町民や役場の皆さんと共に取り組んでいます。9月には韓国済州島で開催された「第9回東アジア農業遺産学会」でみなべ町の取り組みについて報告しました。(写真)

より良い未来を創る力、トランスフォーマティブ・コンピテンシー

 私のゼミには2名の留学生(カンボジア出身)、大阪キリスト教短期大学国際センターの職員、地域で英語塾を運営し英語ミュージカルを通じた演劇教育を実践している方や、地域活性化を通じた人材育成を実践・研究している方など6名で、女性比率も高く、和気あいあいとした雰囲気の中、教育構想実践書の作成に向けて調査・研究を進めています。ゼミのキーワードはローカル、グローバル、ダイバーシティ、ウェルビーイング、そしてサステナビリティです。
 ゼミ以外では、「ソーシャルアントレプレナーシップ論」と「持続可能な開発のための教育(ESD)」を担当しています。「ソーシャルアントレプレナーシップ論」は、様々な社会課題を事業や教育で解決する構想力を培うために、社会起業家の実例研究や、ご自身の教育構想との融合を考察する授業を行っています。世界のSDGsの進捗は、国連報告によれば目標達成が危機的状況にあり、気候変動や格差拡大、紛争などにより多くの目標が後退していると指摘されています。こうした中で求められているのが、持続可能な社会の担い手を育てるESD(持続可能な開発のための教育)です。本科目では、ESDおよびOECDラーニング・コンパス2030を参照し、教育や域学連携活動などを通じて実践する理論と技法を学び、自らの教育現場で企画・試行することを目指します。個人と地域・社会のウェルビーイングを実現するために、自らの「羅針盤」を持ち、より良い未来を創る力、トランスフォーマティブ・コンピテンシーを培うことをめざしています。

越境し、共創する。本学での学びの特徴

 本学の学びの特徴は、越境し、共創することにもあります。20代~60代、北海道から沖縄まで、アジアからの留学生、幼保小中高大の教員・職員、教育事業、生涯学習関連など、様々な教育現場に関わる人が学んでいます。それぞれの現場の経験や問題意識を授業に持ち寄ることで、学びが多面的に深まります。また、気候変動・地域格差・ウェルビーイング等の課題を学ぶことは、都市部のみならず農山漁村などの現場に実際に行くことも重要です。テックを謳っていますが、同時に現場での学びも欠かせません。
 院生の皆さんは、理論と実践を往還しながら教育現場や組織の変革を牽引する「教育イノベーター」であり、新しい教育モデルを、ともに創り出す共同研究者でもあります。
 たまにはオンラインの世界から、リアルな農山漁村にも越境してみませんか?おいしい地酒や地元ならではの郷土料理、そして地域の人たちとの交流は人生を豊かにしてくれます。ぜひご一緒いたしましょう。

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